水田に映る桜の木

大野寺のしだれ桜と弥勒磨崖仏(みろくまがいぶつ)

白い枝垂れ桜

大野寺は、宇田川の流れに沿った山間の小寺であり、しだれ桜と弥勒磨崖仏(みろくまがいぶつ)が有名です。本堂にある身代わり地蔵は、無実の娘を火あぶりの刑から救ったという伝説が残っています。

大野寺の地蔵仏

『弥勒磨崖仏』は、後鳥羽上皇の勅願により造立されたという言い伝えがあり、大野寺から宇田川を超えた対岸の約30メートルの岩壁に彫られ、像の高さは日本で最も高い13.6メートルです。

崖に掘られた仏像
磨崖仏を臨む祠

樹齢300年の「コイトシダレザクラ」2本と、「ベニシダレザクラ」が10本ありますが、現在コイトシダレザクラは養生中であり、少し桜の盛りは過ぎていました。しかし、独特の風情ある白い滝のような桜と川向こうに臨む磨崖仏を見ていると、心が自然におだやかに落ち着きます。

白とピンクの枝垂れ桜

大野寺の庭には、たくさんの桜以外の木の花が咲いており、木蓮や山吹、赤もみじの新芽が桜の回復を待つように境内を彩っていました。

大野寺の庭園の花々

千年桜と山ツツジの鮮やかなコラボレーション

佛隆寺の千年桜とソメイヨシノ

奈良県東部の宇陀市に位置する佛隆寺には「千年桜」と呼ばれている巨木があり、その名のとおり、樹齢は千年近くにおよびます。佛隆寺(仏隆寺)は、850年に弘法大師(空海)の高弟、堅恵が創建したといわれる古刹です。佛隆寺(仏隆寺)に到着すると、風情ある風景が出迎えてくれます。

佛隆寺の千年桜

佛隆寺に続く階段の途中に、圧倒的な存在感でたたずんでいる千年桜。現存する桜としては、奈良県下、最古とされています。品種はヤマザクラとエドヒガンザクラの雑種である「モチヅキザクラ」の一種であることが判明しており、その希少性から、県の天然記念物に指定されています。

周りではソメイヨシノが千年桜を引き立てています。山ツツジも綺麗に咲いて彩りを添えています。ツツジのピンク色が中央の千年桜と周りのソメイヨシノと絶妙なコラボレーションをみせています。

佛隆寺の山ツツジ
紫色の山ツツジと桜の花

千年桜は、根周約8m、約16mの高さを誇り、威風堂々の佇まいです。根株から2mのところで大小11本に分岐した枝が四方に広がり、花を咲かせています。山深い山間の自然を生き抜き、900年経った今でもあふれんばかりの桜の花をつけ、人々を癒してきた神々しい姿に感動します。

枝分かれする桜の木

田んぼに佇む諸木野の一本桜

千年桜の近くに、もう一本見たい桜があります。高齢化が進み、村に住んでいるのはたったの4世帯という諸木野集落にある田んぼに咲く一本桜です。4月下旬に見頃を迎えますが、樹形が美しく、その姿を水田に映し込む様は訪れる者を魅了します。桜はアカバウスズミザクラという種、樹齢は約70年とのことです。

水田に写る桜を見に、満開の時期に狭い一本道を通り、多くの人々が訪れ、村の人はささやかな祭りのようだと語っていました。時間とともに色あいが移ろい、風が吹くと表情を変える水面の桜。村の生活に寄り添うその桜に、心が奪われるのです。

田んぼに映る一本桜

又兵衛桜、大野寺のしだれ桜、佛隆寺の千年桜、そして諸木野の桜。桜の歴史には、常に人が寄り添っていました。それぞれの桜が、長い時に渡る多くの人の想いを受け取り、春を告げる美しい花をつけ人の心を癒します。宇陀の桜のストーリー。現実とは思えないほど美しい映画のような光景がありました。

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