花桃(ハナモモ)に包まれて散歩する夫婦

「日本一の星空」長野県阿智村の春の風物詩「花桃(はなもも)」

「日本一の星空」で知られる南信州・阿智(あち)村。阿智村は、“美肌の湯”として名を馳せる、南信州最大の温泉地「昼神(ひるがみ)温泉」でも知られる山間の里です。

そんな阿智村の春の風物詩といえば、約1万本の花桃が咲き乱れ風景です。赤、白、ピンクの三色の花のパッチワークが村を覆い、ピンク色のグラデーションに染まるのです。

花桃が咲く里は全国各地に点在していますが、これほど多くの花桃が咲き競う村は、珍しいでしょう。4月中旬から5月中旬にかけて花桃が満開となり、桃源郷のような景色へと誘われます。 

食用の桃と花桃はまったくの別物です。花桃は、花の観賞を目的として改良された桃です。中国原産・バラ科サクラ属の落葉小高木で、まさに薔薇の華やかさと桜の可憐さを併せ持ったエキゾチックな花です。

花びらが幾重にも重なっていて、紅・ピンク・白・複色があり、とても華やかです。阿智村では、一本の枝から紅白ピンクに咲き分ける「三色花桃」が多く見られました。見頃の時期が2週間ほどあり、桜よりも長くお花見が楽しめるのも魅力です。

阿智村の花桃のドラマチックなストーリー

この花桃が日本へやってきたのはつい最近のことで、時は大正時代です。1922(大正11年)、木曽発電株式会社の社長、「日本の電力王」と呼ばれた福沢桃介氏(福沢諭吉の娘婿)は、ドイツのミュンヘンで見かけた三色の花桃に魅せられました。福沢氏は、3本の苗を購入して帰国し、木曽の発電所内の庭に植えたのが、その始まりです。

時を経て1974(昭和49)年頃、阿智村に嫁いだ大村トメさんという女性が、嫁入り道具の一つとして花桃の苗をもたらしたことをきっかけに、地域の人々の間に花桃の栽培が広まりました。

その後、「人も少なく殺風景な山里に嫁いでくれたお嫁さんたちの励みにしたい」と、月川温泉の旅館の社長が、温泉郷一帯に花桃の植栽を始め、村は一挙に花桃ブームになったそうです。阿智村全体に1万本の木が植えられ、「日本一の桃源郷」となったのです。村の人たちがどれだけ花桃を愛し、大切にしているかがうかがえます。

三色の花桃と阿智川ののどかなコラボレーション「昼神温泉郷」

阿智村には、はなもも街道、月川温泉郷、昼神温泉郷の三つの花桃スポットがあります。はなもも街道は、伊那谷から木曽谷を結ぶ国道256号沿いの約40キロにわたるエリアです。

4月中旬、阿智村昼神温泉郷で花桃が見頃を迎えており、連日多くの花見客でにぎわっていました。昼神温泉は、静かな山あいにありながら、中央自動車道の園原ICや飯田山本ICから約10分と、アクセスが容易です。

透明で綺麗な水の流れる阿智川。この辺りは自然と温泉の町が作り出す、のどかでどこか優しい雰囲気に包まれています。

川沿いの道に咲く花桃が、そののどかな風景をより魅力的に引き立てます。川沿いの小道を、春風に吹かれながら散歩すると、まるでトンネルのように花桃の花が覆い、幸福感でいっぱいになります。

阿智川沿いの桜並木の先にある朱い橋「湯の瀬橋」と花桃が、風情ある景観になっていました。

桜や梅とは違ったほんわりした味わいの花桃が、村の山際に咲き乱れる様は、まさにこの世ではない、ユートピアそのものでした。

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