十勝牧場の冬の風物詩「馬追い運動」
吹雪の雪原の中、雪を蹴散らしながら走る巨大な馬群の疾走。数年前の雑誌に掲載されていた写真が印象的で、いつか見てみたいと心に残っていました。その写真が、毎年冬に行われている十勝牧場の冬の風物詩「馬追い運動」を撮影したものであると、今年になって知ることができました。十勝牧場は、官営牧場として明治期に誕生し、100余年の歴史を誇る巨大な牧場です。現在は、独立行政法人 家畜改良センターの一組織となっています。国内公的機関で唯一、農用馬の改良、繁殖を行い、171頭を飼育しています。冬は厩舎などで過ごすことが多くなり、運動が不足し、ストレスがかかります。馬追いが行われているのは、冬期間の体力・筋力を増強し、健康な馬体を維持するとともに、ストレスの解消・妊娠馬についてはお腹の子供が大きくなりすぎないように、難産防止を目的として雪中運動を行っています。パドックの状況によって中止になる場合もありますが、冬季(1月~2月)の平日9時30分から約30分~1時間行います。この馬達はブルトンとペルシュロンと呼ばれる種で、帯広のばんえい競馬で活躍しているばん馬達のご先祖様の様な存在です。屈強で力持ちですが、性格は大人しく、北海道の開拓に大きく貢献してくれました。
極寒の雪原を走る馬群に舞う雪
吹雪の札幌を脱出し、車で約3時間、十勝の音更町にある十勝牧場に到着。透き通った青空に迎えられ、映画等のロケ場所としても知られている1.3kmも続く白樺並木を通り、ようやく厩舎に到着。マイナス10度の厳寒の中、背中とお腹にホッカイロを貼りながら、カメラ片手に馬の登場を待ちます。時間になり、ゲートを開けられると一斉に走り出す馬群。集団のものすごい足音が近づいてきます。まず、厩舎から勢いよく出てきたのは、若い牡達です。馬追い運動は10数頭がグループに分かれて、800メートルのコースをそれぞれ2~3周します。馬が氷点下で吐く白い息音を感じながら、目の前をたくさんの馬たちが疾走する光景は圧巻。360度に広がる雪原の中、日高山脈及び大雪連山を遠くにながめながら、地響きとともに舞う雪の迫力を目の当たりにすると、言葉にできない感動があります。若い牡の集団が去った後、大きなお腹をした雌馬達が、ゆっくりとコースを廻ります。1トン前後にまでなる巨大な馬は、すぐ側で見ると信じられないくらいの大きさです。馬にもやはり個性があるようで、元気に走っている馬もいれば、まだ1周しかしていないのに厩舎に戻りたがる馬、圧雪された所しか走らない馬、新雪を楽しんでいる馬等。雪が解けはじめ、十勝にも春の気配が感じられる頃、この大地にまた新たな生命が無事誕生するであることを確信し、十勝牧場を後にしました。
独立行政法人 家畜改良センター 十勝牧場: http://www.nlbc.go.jp/tokachi/
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