石ノ森章太郎作品が寄り添う復興都市「石巻」
宮城県第二の都市石巻の街を訪れると、サイボーグ009や仮面ライダーなど石ノ森章太郎氏の人気キャラクターが、街のところどころで温かく迎えてくれました。
石巻駅から石ノ森萬画館までの約1kmの道のりはマンガロードと名付けられ、様々な石ノ森作品が、震災で最も被害の大きかった市のひとつである石巻に寄り添っています。
石巻の駅前通りにて立ち寄ったのは、被災後再開された石巻焼きそばで有名な昭和20年創業の藤や食堂です。
二度蒸しの柔らかいそばは独特の食感で、麺はやや細めです。食感はかなり柔らかく、魚介出汁の風味が食欲をそそります。色は濃い目ですが、見た目よりあっさりしていて、卓上のソースで味の濃さを調整します。
トッピングは端がカリカリに焼かれた目玉焼きと紅生姜。当時の新聞記事では、被災して営業再会の目処が立ってないと書かれていましたが、石巻の食文化を守るべく再開され、地元市民そして旅行者を美味しい焼きそばが元気づけていました。
お腹を満たし、川沿いに向かう途中、2016年11月にオープンした商業施設「石巻ASATTE」があります。2011年の津波で浸水区域となった立町通りは、銀行が立ち並ぶ以外はシャッター通りと言われて久しい状態でした。
そんな中、地権者と専門家たちが力を合わせ、大がかりな再開発事業をスタートしたそうです。石巻のさまざまな問題をケアする、まったく新しい複合施設を誕生させました。
「石巻ASATTE」は、東日本大震災の津波被害を受けた街に活気を取り戻そうと、“きょう、あす、あさってと続く日々の暮らしを、おいしく、豊かに、心地よく”をコンセプトに誕生したショッピングスポットです。
食のセレクトショップや、手仕事品がそろう雑貨店、レストランなどが入り、買い物・観光スポットとして賑わいを見せています。石巻の”今”を凝縮した、気軽に立ち寄れる立町の新名所です。
一方で、少し進むと1930年竣工の旧観慶丸商店がありました。どっしりとした石造りに見えますが、実は木造3階建ての店舗兼住宅で、当時の流行だったタイル張りの外観はモダンでお洒落です。石巻で最初の百貨店であり、ファンライトや丸窓など、和洋折衷にも見える洋風建築です。
こちらの建物も津波で被災して1階が浸水したそうですが、石巻市の有形文化財として耐震工事され、石巻の歴史・文化についての展示施設と文化交流のための貸スペースを併設した文化発信拠点として再開館されたとのことです。
石巻「復興まちづくり情報交流館」
「復興まちづくり情報交流館」が川からほど近くにありました。
街が繁栄を極めた昭和の時代から、東日本大震災、今後の復興計画まで貴重な写真や映像、模型などを駆使して石巻の歩みを紹介しています。
石巻に住んで約20年のイギリス人のリチャード・ハルバーシュタット氏が、ナビゲーター兼館長を務めています。被災後、母国からの帰国の薦めを断って、石巻にとどまることを選択し、復興に向けて尽力され、地元の人たちから厚い信頼と尊敬を得ています。
被災地を知りたい、震災から学びたいとやってきた世界各国からの訪問者に、震災そして復興に向かう石巻を紹介しています。残念ながら、訪ねた日は不在でお話を伺うことができませんでしたが、週4日の在館日に是非再度訪問させていただきたいと思いました。
「石ノ森萬画館」石巻の復興に向けて夢をつなぐ!
震災の爪痕が残る川沿いの対岸に、街の象徴である宇宙船のようなフォルムをした石ノ森萬画館が見えました。
故石ノ森章太郎先生が足しげく通った石巻。そのスピリットを受け継いだ萬画館は、いつでも世界へ飛び立てるよう宇宙船の形をしているそうです。
石ノ森章太郎先生も深く構想、企画に関わりした。1998年にお亡くなりなった石ノ森先生の意志を受け継ぎオープンした石ノ森萬画館は、子供はもちろん大人も十分に楽しめる夢の空間です。館内には貴重な原画はもちろん、作品の世界を立体的に再現した展示やアトラクション、オリジナルアニメの上映など石ノ森ワールドを満喫できます。
東日本大震災時、萬画館は1階の6.5m地点まで浸水し、1階にあったものはガラスを突き破り全て川へ流されたそうです。いつ再開できるかも分からない状況が続く暗澹とした状況の中、全国各地からの励ましのメッセージや萬画館の正面玄関の割れたガラスを塞いでいたベニヤ板に、約10000人のメッセージが書き込まれました。
萬画館を復興のシンボルとして再開させようという動きが日に日に高まり、震災発生から1年8カ月後再オープンされました。再オープンに詰めかけた来場者は、なんと4000人。2017年12月には、来訪者は300万人を越えました。街のシンボルの復活は、前進しているという力強いメッセージを市民に与えたことでしょう。
休憩所のベンチには、仮面ライダーのオブジェが、石巻の復興していく状況を見守るように座っています。
外に出てみると、川沿いの整備に向けて工事している対岸をバックに、ピンクに咲いている桜の苗木を見つけました。
自然と、桜と緑に囲まれた未来の川沿いの姿を願う石巻市民の想いを、その苗木に巡らせてしまいます。
未来へ新たな橋をかける!石巻復興のおかわまちづくりとは?
萬賀館を出て内海橋を渡る途中、上流に目をむけると、新しい橋が建設されていました。長年に渡って交通の要衝を果たしてきた内海橋が解体され、石巻街道と直結される新内海橋に、未来への発展「復興のシンボル」になることが期待されているそうです。もう少しで、対岸に橋が届き、また新たな歴史が始まります。
石巻の歴史と共に歩み、愛された内海橋のように、新内海橋は市民、利用者の方々から愛され、にぎわいに満ちた橋になるでしょう。
旧北上川を基盤に、古くから「川湊(かわみなと)」として繁栄してきた石巻。旧北上川への市民の想いは強く、東日本大震災で甚大な被害を受けましたが、国と石巻市、住民がスクラムを組み、川の河口一帯で復興拠点となる「かわまちづくり」を展開しています。
目指すのは単なる河川堤防の構築ではなく、人が集い、憩う水辺空間とのことです。震災後、人口減少が続いている宮城県第二の都市・石巻市は、「最大の被災都市から世界の復興モデル都市、石巻を目指して」を掲げています。
大きな挑戦を続けていく石巻に、また近いうちに訪れてみたいと自然と強い感情が湧きました。2018年6月23日、24日には、第4回 いしのまき復興マラソンが開催されました。復興へと進む「元気な石巻!」を発信し続けるその姿勢に、逆に勇気づけられる自分がいました。
石ノ森萬画館 公式サイト http://www.mangattan.jp/manga/en/ \lsdlocked0 L