知床では、 知床財団 がヒグマなど野生動物との共存に以前から取り組んできました。知床はヒグマの生きる領域であり、人はヒグマと共存するためにルールを守らなければいけません、知床財団が、ヒグマと共存していくための活動とは何か?
目次
知床でヒグマと共存するために!世界でも貴重な生態系をもつ知床!
知床が世界的に高く評価されるポイントは、独自性・特徴のある生態系、生物の多様性でしょう。
流氷が運ぶ栄養分によってプランクトンが養われ、豊かな海の生態系が形成され、オオワシやアザラシなどがその恵みを受けます。
また同じく海の栄養を蓄えたサケもふるさとの川を遡上し、海から陸に栄養分が運ばれ、そこでヒグマ、シマフクロウなど山の生き物の餌になり、海と陸の豊かな生態系の相互作用が知床に特有の自然をつくっているのです。
知床には、絶滅危惧種の北海道内で140羽程度しかいないと言われるシマフクロウや、知床にしか生育しないシレトコスミレ、サケ・マス・イルカ・トドなど海の生物たち、ここで越冬しかつ繁殖する世界的に貴重な海鳥、ヒグマ、エゾシカ、アザラシ、トドなど、たくさんの大型ほ乳類も高い密度で生息します。
知床の貴重な生態系を乱すことなく、守ることは人の使命なのです。
知床でヒグマと共存するために! 知床の野生の鹿知床生態系の守り人「知床財団」
魅力ある大地は、その地を求めて多くの人が押し寄せます。それは、貴重な生態系が崩れる危険を常に抱えることになります。だからこそ、この自然を次代に受け継ぐためには、守り人の存在は重要であり、知床には、その危険に向き合ってきた歴史と現実があります。
知床・斜里町では約40年前から、「しれとこ100平方メートル運動」を行い原生の森を復元し、知床の森林を守りぬき、世界自然遺産への登録につなげてきました。
また「100平方メートル運動の森・トラスト」として、現在も植林や保全の活動が続けられています。
公園施設の管理運営や生態系の保全を行っている公益財団法人が、知床財団です。
知床財団は、2005年に世界自然遺産に登録された知床の貴重な自然を、将来にわたって守り伝えるために、野生動植物の調査研究・保護管理、森づくり、ビジター施設の運営、公園利用者への情報提供、自然体験プログラムの実施等様々な仕事に取り組まれています。
知床財団は、野生鳥獣との共存(=自然保全)をミッションのひとつにしています。
もちろん、知床のヒグマと、安全に人が共存していくこともミッションになります。
生命財団の関係者の懸命な努力のおかげで、生態系が守られ、動物が暮らせる環境を保持し、観光客は、そのダイナミックな生態系の一端を見ることができ、様々なことを学ぶことができるのです。
知床でヒグマと共存するために! 知床の野生動物の生態系の領域!
知床の道路を走ると、道脇には何頭もの鹿が佇み、角が立派な牡鹿は、自分たちのフィールドを守るかごとく威嚇します。
冬を前に食べることに夢中なリス達と目があいます。
遠く眼下には、厳しい冬に備え、十分な栄養を蓄えるためにサケを狙うヒグマの姿がありました。ここは、ヒグマ達の棲家、「Mountain field」なのです。
知床の代表的な観光スポット、知床五湖では、ヒグマ対策のための電気柵を設けた高架木道・展望台ルート、地上遊歩道ルートの2つの散策ルートがあり、オホーツク海と知床連山を眺めながらの散策や、生命力溢れる原生林や巨木巡りが楽しめます。
今回は、自由に歩くことができる木道を歩き、一湖に映る知床連山の秋の絶景を見ることができました。
知床でヒグマと共存するために! エサやりがヒグマを殺す現実!
知床のビジター施設で、「エサやりがクマを殺す。」と書かれたポスターを目にしました。
知床財団では、「ソーセージの悲しい最後」と題されたポストカードが作成、配布されています。
このカードは2012年に始まった知床ヒグマえさやり禁止キャンペーンのひとつで、知床財団は、ヒグマにエサを与えないよう、観光客に自制を促しています。
まさしくヒグマへのエサやりは、知床の生態系を壊すことでもあります。
野生動物への人間の干渉や善意が野生のヒグマを死に追いやることがあり、知床財団はそのようなことを避けるため、人前に現れたヒグマを追い払い、お仕置きをすることで人間を嫌うように学習させてきました。
しかし、北海道の知床の森で暮らしていた、ある雌のヒグマは、観光客からソーセージを与えられたことによって、悲しい末路をたどります。
人間の食べ物を知ってしまったことにより、そのヒグマにとって人や車は警戒する対象から、食べ物を連想させる対象に変わり、最後には小学校そばに現れ、駆除の対象となってしまいました。
“彼女は知床の森に生まれ、またその土に戻って行くはずだった。それは、たった1本のソーセージで狂いはじめた。何気ない気持ちの餌やりだったかもしれない。けれどもそれが多くの人を危険に陥れ、失われなくてもよかった命を奪うことになることを、よく考えてほしい。” と、知床財団のカードはしめくくられています。
ヒグマと共存する知床の歴史とは?
知床財団では、ヒグマ出没=捕殺だけではなく、住宅地や農地にヒグマが出没しないための予防対策にも力を入れています。
知床や斜里では、ヒグマ出没時の現地対応に加え、住宅地にヒグマが侵入しないための電気柵の維持管理、利用者や住民にヒグマに関する情報を知らせるためのウェブページの作成等、人とヒグマの共存を図るための活動を行っています。
ヒグマが捕殺される理由は様々ですが、その一つに人に由来するゴミや食品に餌付いてしまうということがあります。
知床や斜里町では、ヒグマは町内に生息する野生動物の代表であり、知床のシンボルにもなっています。
知床財団は、ゴミにヒグマが餌付き、結果として捕殺されることがないように、ヒグマ対策ゴミステーションを設置するプロジェクトなども行っています。
知床財団は、ヒグマとの共存をより確かなものにするための様々な活動に取り組まれています。
まとめ:知床でヒグマと共存するために!知床財団の活動が生態系を守る!
紅葉に染まる樹々、既に落葉した樹々に、平地より一足先に近づく冬の訪れの予感が見えます。
羅臼岳も、もうすぐ一面の雪に覆われ、この横断道路も間もなく閉鎖されます。厳しい知床の冬を、たくさんの生物は生きるための活動を続けるのです。
ヒグマなどの野生動物たちは、厳しい自然の中でその本能を駆使し、生きることを営み続けます。
人間が、それを妨げることは許されません。
知床の大切な生態系を守るため、知床財団は様々なルールを作り、警鐘を鳴らしています。
見守ることの大切さ、自然を守ることの大切さを一人びとりが自覚せねばならないことを、知床の地で学びました。
※ 当記事はTheNewsへ提供した記事を著者が再編集し書き下ろしたものです。