湿原の神「タンチョウ」が雪原を舞う
道東の冬は厳しい。過酷な雪の道路コンディション、札幌からの長い移動距離。頭で考えると訪れる選択をしないのですが、やはり道東の魅力は惹きつける力が大きい。特に、そこで見られる野鳥の見事さはワールドクラスです。釧路まで延びた高速道路は、冬道を走るドライバーにとって、大きな助けになります。朝6時に札幌を出発し、10時に鶴居村 伊藤サンクチュアリに止まりました。既に多数の国内外のカメラマンが、パズーカ砲のごとく望遠レンズカメラを並べています。アイヌ語で「サルルンカムイ」と呼ばれ、湿原の神といわれるタンチョウを撮るために。タンチョウは広く知られているように、飛ぶ時も踊る時も絵になります。強靱な筋肉がその優雅な動きを支え、その姿は凛として美しい。絶滅寸前であったタンチョウの自由な舞いを見、合唱のごとく甲高い鳴き声を耳に残します。
鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリは、日本野鳥の会が運営する施設です。1987年、タンチョウとその生息地を保護するために設置されました。長年タンチョウの給餌人を勤めた伊藤良孝氏が土地の大部分を日本野鳥の会に提供したため、この名前がつきました。一時は十数羽まで数が減ったタンチョウ。絶滅の危機を救ったのは、地元の人たちの取り組みです。厳しい冬に食べ物を求めてやってきたタンチョウに、自分たちのためにとっておいたトウモロコシを与え、給餌を始めたそうです。この地で給餌をしていた伊藤氏もその一人でした。極寒の川を飛び立つ2羽のタンチョウを横に見ながら進む道中、道路を横断する一羽のタンチョウに言葉を失いました。すべての車は止まり、釧路湿原の神であるタンチョウの通過を待まちました。
冬の訪れを告げる使者「オオハクチョウ」
釧路湿原から更に一時間程車を走らせると、カルデラ湖としては日本で1番大きな屈斜路湖に到着です。冬には 凍てついた湖の氷が盛り上がり、その氷の山がどんどん連なる 『御神渡り』と呼ばれる現象が起こる事で知られています。そんな屈斜路湖に、冬の訪れを告げる使者が、シベリアから飛来するオオハクチョウです。晩秋の紅葉から、真白な雪景色に変わり、春の優しい風が感じられる頃まで、北海道で白鳥を見ることができます。屈斜路湖は、冬季でも解氷部分ができる砂湯と呼ばれるポイントがあり、白鳥が集まります。湖でじっと羽を休める姿、大きな羽を広げて飛び立つ景色は、凍てつく寒さの中、人々の目と心を奪います。屈斜路湖から、オホーツク海に向かう途中、一羽のオオワシが羽を広げ青空を舞っていきました。ひがし北海道の旅は、奇跡の出会いの連続となりました。
鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ: http://park15.wakwak.com/~tancho/
屈斜路湖: http://www.masyuko.or.jp/pc/sightseeing/kussharoko.html